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第1 遺言の役割(機能)


近年、相続をめぐる骨肉の争いが著しく増加しております。そして、これにともなって、紛争を予防するために遺言をする人が次に示すように年々増加しております。
  平成元年 平成14年 平成18年
遺産分割調停件数 7,047 9,237 10,668
遺言書の検認件数 5,262 10,503 12,595
公正証書遺言件数 40,941 64,007 72,235

遺言は、相続人の様々な実情に応じて遺産を合理的に配分することにより、相続人間の実質的公平を実現し、紛争の防止を図り、法定の共同均分相続を補充する役割を果たすものです。しかし、遺言による遺言相続には、法律が定める法定相続に優先する効力が認められ、遺言をする人が増えている状況に鑑みると、遺言がない場合に法定相続が補充的に適用されるという逆の見方もできます。
遺言は、家族との関係、財産の状態等遺言者を取り巻く様々な事情に応じるためになされますが、遺言が特に必要とされその役割を果たす典型的な場合を挙げれば、次のようなものがあります。
夫婦の間に子がいない場合
  遺言がなければ、妻の相続分は4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続することになります。妻の内助の功に報い、その老後の生活に配慮して、遺産のすべてを妻に相続させたいときは、遺言をする思いやりが必要です。
相続人が全くいない場合
  この場合は、特別な事情のない限り遺産はすべて國庫に帰属してしまいます。お世話になった人に遺贈したり、福祉団体等に寄付したいときは、遺言が必要です。
離婚した先妻との間に子がいて再婚した場合
  この場合は,後妻が2分の1、先妻との間の子が2分の1の相続分となりますが、感情的対立等から遺産分割に関して紛争がよく起きる例です。遺言により、生活状況等に応じた相続分の指定や遺産分割方法の指定をすることで、紛争を予防することが可能です。
妻の老後や障害のある子の将来が心配な場合
  子の同居や世話が期待できない妻あるいは障害のため自立できない子に生活資金をより多く残してやりたいときは、遺言で明確にしておく思いやりが必要です。
家業や農業の後継者に事業用資産や農地を承継させたい場合
  遺言で事業用資産や農地の配分方法を明確にしておく必要があります。
相続人ごとにそれぞれ特定の遺産を相続させたい場合
  各相続人の年齢、職業、生活状況、健康状態等を勘案して、特定の不動産や金融資産をそれぞれに配分したいときは、遺言が必要です。
内縁の妻の場合
  永年夫婦として共同生活を営んでいても、婚姻届が出されていないと、相続権は全くありません。内縁の夫は遺言をしておく配慮が必要です。
相続人以外の人から世話を受けている場合
  例えば、亡くなった子の嫁が同居し、亡夫の両親の世話をしている場合でも、嫁には全く相続権がありません。その親身の世話に報いたいならば、遺言をする配慮が必要です。