第8 遺贈
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意義
遺贈とは、遺言者が遺言により、包括又は特定の名義で財産の全部又は一部を特定の人に無償で与える単独行為です(民法第964条)。贈与(民法第549条)も無償の財産譲与という点で共通していますが、贈与は契約であり、生前行為である点で異なります。また、死因贈与(民法第554条)は、贈与者の死亡により効力を生じる点において遺贈に類似していますが、契約である点で異なります。
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受遺者と遺贈義務者
遺贈の利益を受ける者を受遺者と呼び、遺贈の実行をすべき義務を負う者を遺贈義務者と呼びます。
相続人その他の個人の外、会社などの法人を受遺者にすることもできます。胎児も受遺者になれますが、相続欠格者は受遺者になれません(民法第965条)。受遺者は遺言の効力発生の時に生存していることを要し(同時存在の原則)、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、遺贈は効力を生じません(民法第994条第1項)。
遺贈義務者は、原則として相続人です。包括受遺者(民法第990条)、相続人不存在の場合の相続財産管理人(民法第952条)も遺贈義務者となります。遺言執行者があれば相続人に代って遺贈義務者となります(民法第1015条、第1012条)。 -
遺贈の無効、取消
遺贈特有の無効原因として、次の場合があります。
(イ) 遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合(民法第994条第1項) (ロ) 停止条件付遺贈において条件成就前に受遺者が死亡した場合(民法第994条第2項) (ハ) 遺贈の目的たる権利が遺言者の死亡の時に相続財産に属していない場合(民法第996条)
遺贈特有の取消原因として、次の場合があります。
負担付遺贈の受遺者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は相当の期間を定めて履行を勧告し、もし、その期間内に履行がないときは、遺言の取消を家庭裁判所に請求できます(民法第1027条)。
遺贈が効力を生じないとき、又は放棄により効力がなくなったときは、受遺者が受けるべきものは、相続人に帰属することになります。しかし、遺言者が遺言で別段の意思表示をしていたときは、その意思に従うものとされています(民法第995条)。 -
遺贈の承認と放棄
遺贈は一方的に行う単独行為であり、受遺者は遺贈を受けることを強制されるものではなく、遺贈を承認するか放棄するかの選択の自由を有しています(民法第986条)。しかし、受遺者が長期間承認も放棄もしないときは、遺贈義務者その他の利害関係人は、相当の期間を定め、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨を受遺者に催告することができます。若し、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対して、その意思表示をしないときは、遺贈を承認したものとみなされます(民法第987条)。
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包括遺贈と特定遺贈
⑴ 包括遺贈
包括遺贈とは、包括の名義でなされる遺贈のことで、包括の名義とは、遺言者の死亡時に存在する財産の全部又はその一部を遺贈の対象とすることです。遺言者の財産の全部を一人の受遺者に帰属させようとする全部的包括遺贈と一人又は数人の受遺者に対する財産の帰属の割合を示す割合的包括遺贈とがあります。全部的包括遺贈は、「甲に遺言者の有する全財産を包括して遺贈する」、「甲に次の不動産を含む遺言者の有する全財産を包括して遺贈する」というように遺言します。割合的包括遺贈は、「甲に遺言者の有する全財産の三分の一を包括して遺贈する」、「甲乙丙の三人に遺言者の有する全財産を三分の一ずつの割合で包括して遺贈する」というように遺言します。包括遺贈を受けた包括受遺者は相続人と同一の権利義務を取得し(民法第990条)、積極財産だけでなく消極財産(債務)も承継します。他に相続人又は包括受遺者がいるときは、共同相続したのと同一の法律状態となり(民法第899条、第898条)、この状態を解消するには遺産分割協議が必要となります。⑵ 特定遺贈
特定遺贈は、「遺言者の所有する次の土地を甲に遺贈する」というように、遺言者の所有する特定の財産を特定の受遺者に承継させるのが典型的な例です。この場合は、遺言の効力発生により、当然に受遺者に目的財産の権利が移転します(物権的効力)。
特定遺贈の目的物が一定額の金銭や一定量の不特定物又は相続財産に属しない権利であるときは、遺贈は債権的効力を生ずるにすぎません。受遺者は遺贈された物の権利の移転を遺贈義務者に対して請求する権利を取得するにとどまります。
受遺者が遺言者に対して負担している債務を免除する遺言も、特定遺贈の一種として有効であるとされています。
