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第9 遺言の執行

  • 意義
    遺言の執行とは、遺言者が死亡し、遺言が効力を生じた後に、遺言書に書かれている遺言の内容を法的に実現するため、必要な処理をすることです。
    未成年者の後見人の指定(民法第839条)、後見監督人の指定(民法第848条)、相続分の指定又はその委託(民法第902条)、遺産分割の禁止(民法第908条)、相続人間の担保責任の指定(民法第914条、第911条ないし第913条)、遺言執行者の指定又はその委託(民法第1006条第1項)、遺留分減殺の制限(民法第1034条但書)などの遺言は、遺言の効力発生とともに当然遺言の内容が実現され、遺言の執行を必要としません。しかし、その他の遺言は、遺言が効力を生じてもその実現のために執行を必要とします。遺言の執行は、遺言執行者又は相続人が行いますが、子の認知の届出(民法第781条第2項、戸籍法第64条)、推定相続人の廃除又はその取消の家庭裁判所に対する申立(民法第893条、第894条第2項)は、必ず遺言執行者がしなければなりません。
  • 執行の準備手続(遺言書の検認、開封)
    公正証書遺言を除くその他の方式により作成された遺言書を保管する者又は遺言書を発見した相続人は、相続の開始を知った後、遅滞なく、家庭裁判所に遺言書を提出して、その検認を請求しなければなりません(民法第1004条第1項)。また、封印してある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会がなければ、開封することができません(民法第1004条第3項)。実務の上では、検認と開封は同一の手続で行われ、家庭裁判所は提出された戸籍謄本により相続人を確認し、検認、開封の期日を定めて相続人に通知します。この検認、開封の目的は、遺言書の存在と現状を明確にし、偽造、変造を防止するためです。遺言書の提出を怠った者、検認を経ないで遺言を執行した者、家庭裁判所外において開封した者は、5万円以下の過料に処せられます(民法第1005条)。
    なお、相続人が遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿すると、相続欠格者となり(民法第891条第5号)、受遺者が同様の行為をすると、受遺欠格者となります(民法第965条)。
  • 遺言執行者
    遺言執行者には、遺言者が遺言で指定する指定遺言執行者(民法第1006条)と家庭裁判所が選任する選定遺言執行者(民法第1010条)があります。
    未成年者及び破産者は、遺言執行者となれません(民法第1009条)。推定相続人の廃除のように相続人たる資格と相容れない内容の遺言以外は、相続人を遺言執行者に指定してさしつかえありません。
    遺言執行者は、就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならず(民法第1007条)、遅滞なく、相続財産目録を作成しなければなりません(民法第1011条)。
    遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し(民法第1012条)、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができなくなります(民法第1013条)。
    遺言者は、遺言で遺言執行者に第三者への復任権を与えたり(民法第1016条第1項但書)、2人以上の遺言執行者を指定して、その任務を共同でなすべき旨又は単独で行うことができる旨定めることができます(民法第1017条第1項但書)。
    遺言執行者が任務を怠ったとき、その他正当な事由があるときは、利害関係人の請求により、家庭裁判所は遺言執行者を解任することができ、また、遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、辞任することができます(民法第1019条)。