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(2) 遺言能力

  • (イ)遺言能力とは

    遺言は財産関係、身分関係に影響を及ぼす法律行為であり、合理的な判断能力(意思能力)が必要です。
    さらに遺言を有効になし得る年齢が規定されており、満15歳に達した者に遺言能力が認められます。未成年者であっても満15歳に達していれば、法定代理人の同意を得ることなく遺言をすることができます。
    成年被後見人の場合、遺言の時に本心に復し意思能力を有していれば有効な遺言となります。但し、医師二人以上の立会が要求されています。
    被保佐人は、不動産の売却など一定の重要な財産行為をするには、保佐人の同意が必要とされていますが、同様の行為であっても、保佐人の同意なく有効に遺言することができます。
    一方、満15歳に達しない者は遺言をすることはできず、たとえ意思能力を有していても、その遺言は無効です。
  • (ロ)遺言を行う能力が否定された事例

    判例の多くは、遺言者のこれまでの生活状態、遺言書作成の具体的経過、遺言者の症状についての医学的判断及びその法的評価、遺言書の内容などの諸事情を詳細に認定したうえで、遺言者の遺言当時の能力の有無を判断しています。

    (a)東京高等裁判所昭和52年10月13日判決は、

    脳溢血で倒れた老人がした公正証書遺言の効力が争われた事案です。
    遺言者は脳溢血後遺症としての脳動脈硬化症があり、遺言当時に中程度の人格水準低下と痴呆がみられ、是非善悪の判断能力並びに事理弁別の能力に著しい障害があったとする鑑定結果は相当であると認められ、有効に遺言をなし得るために必要な精神能力を欠いていたとして、遺言は無効であると判示しました。

    (b)大阪地方裁判所昭和61年4月24日判決は、

    肝硬変と肝がんとの合併による肝不全症状や貧血により重篤な状態で点滴中の81歳の老女がした公正証書遺言の効力が争われた事案です。
    遺言者は公正証書作成の3日前から昏睡状態で推移し、公正証書作成時には問いかけにうなずき、あるいは簡単な返事で応答することがあったにしても、意識状態はかなり低下し、思考力や判断力が著しく障害された状態であり、一方遺言の内容がかなり詳細で多岐にわたることを併せ考えれば、遺言作成時には遺言者はその意味内容を理解するに足りるだけの意識状態を有していたとは考え難いとして、遺言は無効であると判示しました。

    (c)宮崎地方裁判所日南支部平成5年3月30日判決は、

    老人性痴呆症の老女がした公正証書遺言の効力が争われた事案です。
    中等度以上の痴呆状態にあった遺言者の精神能力は高度に障害されていること、および遺言作成の具体的経過から、遺言者には遺言の対象となった土地の地番の認識がなかったことが推認されるとして、遺言能力が欠けていたと判示しました。

    (d)名古屋高等裁判所平成5年6月29日判決は、

    老人性痴呆の老人がした公正証書遺言の効力が争われた事案です。
    遺言者は中等度ないし高度な老人性痴呆の状態にあり、正常な判断力、理解力、表現力を欠いていたこと、遺産をこれまでほとんど深い付き合いがなく親族でもない第三者に受贈する動機に乏しいことなどの事実を認定し、遺言能力を欠いていたと判示しました。