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第10 遺留分

  • 意義
    遺留分制度とは、被相続人が有していた相続財産の一定割合の承継を一定の法定相続人に保障する制度です。被相続人は遺言により自己の財産を自由に処分することができることが原則ですが、この遺留分制度により遺言の自由が一定限度で制限されることになります。
    遺留分を侵害する遺言も当然に無効ではなく、遺留分の減殺請求があってはじめて遺留分に該当する部分の効力が生じないことになります。しかし、できうる限り遺留分減殺請求権を行使されて紛争にならないよう、相続人の事情等に応じて遺留分に配慮した遺言をするとか、生前贈与の際に遺留分の放棄をしてもらうなどの対策を講じておく必要があります。
  • 遺留分の割合と遺留分権利者
    相続財産に対して保障される一定割合を遺留分といい、遺留分を有する法定相続人を遺留分権利者といいます。兄弟姉妹には遺留分がなく、配偶者、子、直系尊属が遺留分権利者です(民法第1028条)。
    遺留分は、直系尊属のみが相続人であるときは相続財産の3分の1、配偶者、子が相続人であるときは相続財産の2分の1です(民法第1028条)。これは総体的遺留分ですので、これを各相続人の具体的な個別的遺留分としてみると、例えば、配偶者と子2人が相続人である場合は、配偶者の遺留分は2分の1の2分の1で4分の1となり、子は2分の1の2分の1である4分の1を2人で2分の1ずつ分け合い8分の1の遺留分となります。父母のみが相続人の場合は、3分の1の2分の1で父母それぞれ6分の1の遺留分となります(民法第1028条)。
    胎児にも子の代襲相続人にも遺留分があります。相続欠格者、相続人を廃除された者、相続を放棄した者は、遺留分権利者とはなりません。子が相続欠格となり、又は相続人を廃除されたときは、孫が代襲相続人となり、遺留分権利者となります(民法第1044条、第887条第2項第3項)。
  • 遺留分の算定
    遺留分を侵害された相続人は、自己の遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈あるいは贈与の減殺を請求することができます(民法第1031条)。そこで、この遺留分減殺請求の前提として、遺留分の具体的な算定が必要となります。遺留分算定の基礎となる財産は、被相続人が相続開始の時に有した財産の価額に贈与した財産を加え、債務の全額を控除して算定します(民法第1029条)。
    被相続人が相続開始の時に有した財産には、次のものが算入されます
    (イ) 遺贈の目的とされた財産が含まれますが、死因贈与契約の目的とされた財産も含まれると解されます(有力説)。
    (ロ) 相続開始前1年間にした贈与の全価額を算入し、贈与の当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与は、1年前にしたものでも、その価額を算入します(民法第1030条)。
    (ハ) 有償行為であっても、不相当な対価でなされ、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたものに限り、贈与とみなしてその価額を算入します。この場合、遺留分権利者が減殺を請求するときは、その対価を償還しなければなりません(民法第1039条)。
    (ニ) 共同相続人の中に婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与(特別受益)を受けた者がいるときは、贈与の時期や当事者が損害を加えることを知っていたか否かにかかわらず、その贈与の価額が含まれます(民法第1044条、第903条第1項)。
    遺留分算定の基礎となる財産は、相続開始の時を基準として評価されます。
  • 遺留分減殺請求権の行使
    自己の遺留分を侵害された遺留分権利者及びその承継人は、自己の遺留分を保全するのに必要な限度で、贈与や遺贈などの減殺を請求することができます。減殺の順序は、先に遺贈をした後で贈与を対象としなければなりません(民法第1033条)。遺贈が幾つかあるときは、遺言者の別段の意思表示がない限り、全部の遺贈をその価額の割合に応じて減殺することになります(民法第1034条)。贈与が幾つかあるときは、後の贈与から始め、順次前の贈与を減殺することになります(民法第1035条)。
    遺留分減殺請求権の行使の相手方は、減殺の対象である遺贈、贈与により直接利益を受けている受遺者、受贈者です。その方法は、相手方に対する意思表示で足りますが、配達証明付内容証明郵便により行うのがよいでしょう。相手方が任意に応じないときは、訴訟を提起するほかありません。
    遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があることを知った時から、1年間権利を行使しないときは、時効により消滅します。相続開始から10年を経過したときも消滅します(民法第1042条)。
  • 遺留分の放棄
    相続の放棄は、相続の開始前にすることはできませんが(民法第915条)、遺留分の放棄は、相続の開始前でも家庭裁判所の許可を得てすることができます(民法第1043条)。遺留分の放棄は、相続そのものの放棄ではなく、遺留分放棄者も相続開始後は相続人となります。相続開始前の遺留分の放棄ができるのは、第1順位の相続人に限られ、共同相続人の1人がした遺留分の放棄は、他の相続人の遺留分に何らの影響を及ぼしません。
    相続開始後の遺留分の放棄については、明文の規定がありませんが、家庭裁判所の許可がなくても有効になし得ると解されています。